あなたは、パソコン周辺機器メーカーに勤めています。今は人材開発部のスタッフです。
今日、コールセンターのあるチームリーダーから次のような趣旨の相談を受けました。
「お客様サポートスタッフに研修を企画したい。大部分はお客様の潜在ニーズを引き出すヒアリングスキルが足りないので、顧客満足度の目標が達成できない。何かいい研修がないかな?」
いろいろと話を聞くと以下のことがわかりました。
コールセンターにはいくつか担当がありますが、このチームのミッションは、お客様から検討中の商品に対する疑問や不安を聞き、その背景にある現在の悩みや潜在ニーズを聞き出し、適切な商品を提案することです。ただし、受注するところまでは要求されていません。
このチームの目標は、1回のコールでお客様が購入する商品を決めること、そして、スタッフの対応に関するお客様満足度が「満足した」「大変満足」の合計で90%以上になることです。しかし、現状は1回のコールで購入する商品が決まらないケースもあり、「満足した」「大変満足」とするお客様は80%です。
お客様は老若男女さまざまで、予備知識にバラツキがあります。コールしてくるお客様は「ここに聞けば何でもわかるだろう」と期待されており、その期待は高まる一方だということです。また、最近のお客様はちょっとしたことですぐに怒り、スタッフはなぜ怒っているのかわからなくなることも多いそうです。
サポートスタッフに期待されていることは「お客様の質問に適切に答え、お客様の疑問を解消する」「お客様の質問に答えるだけでなく、その潜在ニーズを引き出して提案する」「よく勉強しているお客様の無理なご要望はうまく断る」ことです。
ところが、現状はお客様の質問に答えることだけで精一杯になっているスタッフが多く、お客様の疑問を解消するところまで至らないことが少なくないようです。また、難しいお客様の質問には即答できず、対応に困ることも多いようです。
とはいえ、いろいろな事業部がさまざまな商品を短いサイクルで次々に出しているので、商品を覚えるだけでもかなり大変です。
チームリーダーが気にしていたのは、スタッフ個々人がよかれと思う対応をしていて、対応する基準がバラバラだということです。
現在は、スタッフ毎にお客様の対応件数は把握しているようですが、評価指標として明確なものは特にないようです。朝礼とか定例ミーティングをやっていますが、キャンペーンや新商品などの伝達事項が中心で、お客様の変化を話し合ったり、対応の成功・失敗事例を共有したりする時間はないようです。リーダーは、自分でもコールを受けているため、若手のスタッフに対するコーチングが不十分だと言っていました。
リーダーの見るところ、全般的にスタッフの商品知識の幅は狭く、潜在ニーズを聞き出すヒアリングができていないことが問題の原因だということです。そこで、商品知識の勉強会は自分達でやるとして、「お客様の潜在ニーズを引き出すヒアリングスキルを高める研修」は外部の研修会社を使いたいということでした。
【問い】
(1) あなたが人材開発スタッフならこの次に何をしますか?
(2) 今ある情報をもとに現状を整理すると、どのような解決策が適切だと思いますか?
(3) 率直に言って、ふだんは上記のような情報の何割くらいを把握して、仕事をしている
と思いますか?
(4)上記について、人材開発部門の同僚と議論してみてください。
パフォーマンス・コンサルティングⅡ
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鹿野 尚登 (しかの ひさと)
1998年にパフォーマンス・コンサルティングに出会い、25年以上になります。
パフォーマンス・コンサルティングは、日本企業の人事・人材開発のみなさまに必ずお役に立つと確信しています。
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