パフォーマンス・コンサルティングはHPTの考え方をかなり取り入れていますが、そのHPTはISDをはじめ、多くの学問分野の考え方を吸収し、応用しています。その中でもISDの考え方をベースに発展してきたと言われています。
学習にシステムズアプローチを応用したもので、インストラクションの効率や効果にかかわる問題を解決してきました。
基本的な考え方は、最初にトレーニングで解決できる問題かどうか見極め、スキル・知識が問題であれば、それらを効率的、効果的に習得できるようにインストラクションを設計開発するというものです。
本来の学習目標には関係のないコンテンツやモジュールを省き、不必要に長いトレーニングを大幅に短縮し、学習効果を見えるようにする上で大きな貢献をしてきたといえます。
このような効果をあげるためにADDIEと呼ばれるプロセスに則って取り組みます。まず、学習する上で、学習者とタスク・職務の両方に求められることを分析し、インストラクション・ニーズを特定します。次に、学習目標を明らかにし、プログラムを設計し、テストをします。次に、教材を開発し、プログラムを実施するのです。各フェーズではデータを収集し、所期の学習目標の実現に近づけるように修正を加えていきます。
ISDが業務上のパフォーマンス問題に応用されるにつれて、学習ソリューションで解決できる問題が限られることが明らかになり、より広いパラダイムが求められるようになってきました。
参考:Handbook of Human Performance Technology(初版),1992
R.F.メイガー,『CRI技法』1998
G.W.Wallace, lean-ISD, 1999
Handbook of HPT
Robert F. Mager
lean-ISD
人の生産性や能力を向上させる体系的なアプローチで、一連の方法論やプロセスを活用して問題解決を行い、人のパフォーマンス(行動と成果)を改善するものです。
基本的な考え方は、「特定の職務の従業員に効果的なパフォーマンスを促すことで、求められる業績を改善する」というものです。
ISDよりもさらに業務上の成果の改善に関心が移り、そのために必要なモデルやプロセスが明確になっています。
一般的なモデルでは、人のパフォーマンスに影響を与える要因を個人レベル、職場レベル、組織レベルで整理しています。とりわけ個人要因と職場環境要因をわかりやすく整理しており、パフォーマンスに問題があるときの原因分析やソリューションの選択をする上で、基盤となっています。ギルバートやラムラーなどのモデルが有名です。
これらのモデルでは、人の知識・スキルという要因以外に、職場で上司が示す期待成果、職場で利用できる資源、インセンティブ、個人の能力や動機などがあげられています。
言い換えれば、知識・スキルの問題に対処する学習ソリューションだけでは人のパフォーマンス改善はできないので、それ以外の要因に対応するソリューションも用意するということです。
HPTのプロセスは、職場の人の行動と成果について現状を分析し、最も費用対効果の高いプログラムを選択し、設計、開発、実行、評価するというものです。
解決策の効果性を高めるために、問題の原因を特定するパフォーマンス現状分析を特に重視しています。
参考:Handbook of Human Performance Technology(第3版),2006
ISDとHPTとの関連をもう少し詳しく知りたい方はこちらへ
HPT、HPIとパフォーマンス・コンサルティングの関連はこちら
初版(1992)
2版(1999)
3版(2006)
「パフォーマンスが低いときの原因として、やる気(関心がない)と能力(頭がわるい)がよく言われる。しかし、多くの場合、このふたつのことは能力が発揮されていない原因として見るべき最後の要因である。というのは、このふたつが本当の問題であることは稀だからだ」
――Thomas F Gilbert, Human Competence,1978
個人のやる気や能力を疑うより、職場環境要因を先にみる方が効果的という主張です。というのは、パフォーマンスが低いときの原因としては上司の指示やフィードバックといった期待成果の示し方などに問題があることが多く、職場環境にアプローチする方が従業員の研修などよりもコスト的に安いからです。
「優秀な人材が問題のあるシステムに挑んだ場合、問題のあるシステムに軍配があがるのが常である。われわれは問題のないパフォーマーを何とかしようと多くの時間を割き、問題のあるシステムの改善に十分な時間をかけていない」
――Geary Rummler, Improving Performance,1995
人のパフォーマンスに影響を与える要因として、個人の能力やスキルよりも職場のシステムやプロセスの方が、影響力が強いことを指摘した有名な警句です。何でも研修から発想しがちな傾向を戒める言葉だと思います。
GilbertとRummlerの言葉についてもっと知りたい方はこちらへ
「もし、それをやらないと命がないとしたら、従業員はやれるか?」
――Robert Mager, Analyzing Performance Problems,1970
本当に研修が必要かどうかを判断する問いとして、有名なものです。
自分の命がかかっている状況でも要求されたことができないのは、知識やスキルがないためだと思われます。こういうときは、トレーニングが解決策になります。しかし、そういう状況になるとできるのであれば、すでに知識やスキルがある証拠です。その場合は、原因が他の要因ですからトレーニング以外の解決策が必要になるわけです。この言葉も研修から発想しがちな傾向を戒めるものです。
「経営幹部は、事業目標を達成するにはどの従業員グループがカギになるのかわかっている。しかし、その従業員グループが今より『何をたくさんやる必要があるのか?』『何をレベルアップしなければならないのか?』『何を違うやり方にする必要があるのか?』はあまり考えていないかもしれない」
――Robinson & Robinson, Performance Consulting(second edition),2008
売上を増やすためには営業担当者がカギになり、生産コストを下げるためには生産技術者がカギになるなどと、事業目標を達成するためのターゲットの従業員はすぐにわかります。しかし、そのために彼らの仕事の仕方で何を変えることが必要なのか、これを各論で明確に答えることができる経営幹部は少ないということです。
1978年(写真は復刻版)
G. Rummler 1995年
1997年
ギルバートは「価値のあるパフォーマンス」を次のような数式で示しました(Thomas Gilbert, Human Competence,1978)。
この意味するところを平たく言えば、「いくらやっても成果が出なければ意味がない」とか「ムダな動きはするな」というようなことになると思います。
言い方を換えると、優秀な人はムダな動きをせずに高い成果を上げます。有能と言われる人はパフォーマンスの経済的価値が高い人です。
人間の能力を有能な人材レベルにまで高めるためには、この式に関連して以下のことを理解しておくことが重要だとギルバート氏は言っています(Thomas Gilbert, Human Competence,1978)。
なかなか意味深なことを言っています。結局は、「分子を大きく、分母を小さくするだけの話」と言えばそれまでですが、職場の従業員のパフォーマンス(行動と成果)を改善するときの基本原理として頭に入れておきたいことです。
パフォーマンス・コンサルティングⅡ
研修効果にこだわる人事・人材開発スタッフには、おすすめの一冊。人材開発部のビジネス志向を高めるための具体的なフレームを整理した本です。
人材開発の上流で役立つ情報が満載です。
以下はロビンソン夫妻(Dana Gaines Robinson & James C. Robinson)の主要な著作です。「パフォーマンス・コンサルティングの進化を辿る」と言うほどではありませんが、夫妻の考え方が少しずつ進化・発展してきたことはご理解いただけると思います。尚、下記はあくまでも主要な著作であり、他にも夫妻が寄稿した論文は多数あります。
ロビンソン夫妻の処女作です。『パフォーマンス・コンサルティング(初版)』1995年のベースとなるアイデアやモデルの原形が随所にみられます。本書の反響は非常に大きかったと後に述べています。
この本ではTraining-for-Activityアプローチをやめて、Training-for-Impactアプローチを実践しようと提案しています。平たく言えば、研修を実施するだけで是とするのではなく、研修を実施するならきちんと事業に貢献する成果を出そう、ということです。
Training-for-Activityアプローチとは、「トレーニングは要請があれば実施するものであり、トレーニングはイベントである」と捉えるアプローチです。もう少し言えば、より多くのトレーニングプログラムを開発・実施し、研修ガイドブックが分厚ければ、研修機会が多く、望ましいとする考え方です。また、研修受講者数、トレーナー稼働日数が増えればトレーニング部門は成功しているとみるわけです。しかし、このアプローチでは、効果測定は満足度レベルだけで、事業成果に対する貢献や職場でのスキル活用にあまり関心がありません。
ロビンソン夫妻は、このアプローチを続けていてよいのか、と問いかけています。
Training-for-Impactアプローチは、上記の考え方に対して警鐘を鳴らし、きちんと成果を出そうとするものです。つまり、単に研修を実施するのではなく、まず事業ニーズを明らかにし、クライアントと一緒にパフォーマンスギャップの原因や望む事業成果とスキル・知識の関係性を明確にしてから研修を設計し、研修を実施した後はその成果を測定しよう、というものです。これを12のステップで整理しています。本書ではこの12ステップを1章ずつ丁寧に解説しています。
本書の軸足はまだトレーニングにあり、「研修プログラムを通じていかに成果を生み出すか」が主題になっています。
本書は前著のアイデアが「パフォーマンス・コンサルティング」というコンセプトに昇華し、それを実践するためのモデルやツールを紹介しています。
基本メッセージは、
というものです。
本書の軸足は人材開発部門そのものにあり、パフォーマンス・コンサルタントという新しい役割やパフォーマンス改善部門という新しい部門を提唱しました。
前著もステップ・バイ・ステップでかなり各論の解説をしていましたが、本書はさらに詳細に具体的な実践ツールを紹介しています。たとえば、4つのニーズ、パフォーマンス相互関係マップ、パフォーマンスモデル、トレーニング・ニーズ・マトリックス、インタビューガイド、データ報告の仕方などについて、事例や演習を交えながら詳しく解説しています。
前著の12ステップは、一部を除き、パフォーマンス現状分析の各論の中にほぼ吸収され、しかも上記のようなツールに進化したと言ってよいと思います。
本書は何しろ実践的です。先にあげたインタビューガイドは本当に詳細で、これでもかというくらい懇切丁寧な解説をしています。さらに、パフォーマンス・コンサルティングプロジェクトを社内で契約するときの手引きまで解説しています。その上、パフォーマンス改善部門に移行するときに考慮すべきことを簡易サーベイにしており、各社で議論できるようにその材料まで用意しています。
本書は北米のHRD関係者にインパクトを与えただけにとどまらず、世界的に大きなうねりとなって広がりました。本書以降、パフォーマンス・コンサルタントという肩書の人が増えたり、ASTDでパフォーマンス・コンサルティングの事例発表がされたりするようになりました。
これはロビンソン夫妻の編著です。タイトル通り、トレーニング部門からパフォーマンス改善部門へ移行していくための理論と実践事例をまとめた本です。
本書「はじめに」では、以下のような趣旨のことを述べています(かなり要約しています)。
HRDの専門家は50年以上にわたって従業員やマネジャーのスキルと知識を向上させることに力を入れてきた。その主な手段はトレーニングコースの体系を設計し、実施することだった。…ASTDが行ったHRD関係の経営幹部を対象にした調査結果(1998年当時)によると、「トレーニング提供からパフォーマンス改善へ」というトレンドは、現在、そして向こう3年も上位3番目につけている。…私たちの専門家としてのミッションは文字通り変わりつつある…
本書ではコンサルタントがフレームワークやモデルを解説し、その後で実務家が実践事例を紹介するという構成になっています。コンサルタントの中にはヒューマンパフォーマンスの大御所と言われている Geary Rummler, Harold Stolovitchも含まれています。事例としては、PNC Bank, Steelcase, Johnson & Johnson, Prudential HealthCareなど6社の事例が紹介されています。
ロビンソン夫妻は、第1章 A Focus on Performance: What Is it? と第12章 A look into the Futureを書いています。
第1章では、HRDの専門家は構造的な変化の中にあり、求められる成果は学習からパフォーマンス改善へシフトしていること、パフォーマンス改善をしていくためには部門の再設計が必要なこと、クライアントともに4つのニーズを定義し、それらの整合性を取ることが必要だと述べています。また、パフォーマンス・コンサルタントという新しい役割にもふれています。
第12章では、将来の組織論について述べています。HRの傘下に採用や研修部門がぶら下がるというかつての構造が、パフォーマンス改善というミッションのもと、クライアントの事業ニーズを把握してパフォーマンス現状分析をする部隊とその分析結果に基づいてソリューションを開発する部隊に分かれるイメージを紹介しています。
これはHandbook of Performance Technology(第2版)第34章の論文です。
パフォーマンス・コンサルタントという職務が生まれた背景にふれ、その主な職務成果を解説しています。
パフォーマンス・コンサルタントが登場した背景としては、次の3つあげています(かなり要約しています)。
また、Partners in Change社で行った22社(米、加)の調査結果とロビンソン夫妻のコンサル経験からパフォーマンス・コンサルタントの主な職務成果として次の5つをあげ、解説しています。
ややオタク的になりますが、この論文で“What must people do more, better or differently if the business goal is to be achieved?”という定番のフレーズが登場しています。また、4つのニーズの“Training Needs”が”Learning Needs”に変わっています。
本書は『1分間マネジャー』で有名なケン・ブランチャードとの共著です。ロビンソン夫妻が空港でブランチャードと会い、「パフォーマンス・コンサルティングはいい本だけど、ちょっとアカデミックすぎる。もっとやさしくしてマネジャーにも読めるようにしないと…」というようなことを言われたのがきっかけだと言っていました。
ということで、この本は2時間半程度でパフォーマンス・コンサルティングのエッセンスを学べる本です。コールセンターのマネジャーが人事部のマネジャーの協力を得ながら、顧客サービス担当者の行動を変えることで、オペレーション目標を達成していくという物語です。
パフォーマンス現状分析ツールとしては、4つのニーズ以外に、以降で定番になるGap Zapper、GAPS!ロジックを解説しています。ロビンソン夫妻は、ブランチャードに語呂合わせでわかりやすくするようにしきりに勧められて、分析ロジックの“GAPS!”などのネーミングを考案したと言っています。
僭越な言い方になりますが、本書は「1分間パフォーマンス改善」というべき内容です。ラインマネジャーがチームや部下の業績を改善する上で、ヒューマンパフォーマンスの視点をどのように利用するのかがよくわかると思います。
またもやオタク的になりますが、本書以降4つのニーズの“Learning Needs”は “Capability Needs”に変わっています。この頃から「パフォーマンス相互関係マップ」は利用しなくなったとも言っています。
本書の軸足はHRにあります。HRのスタッフが経営陣に対して戦略レベルのパートナー(SBP)になるために必要な要件、役割、具体的な貢献の仕方を解説しています。
ここで言うSBPとは、「経営陣と協力して人にかかわる諸施策を決定し、それらの施策間の整合性を取り、実行することで事業貢献する人」のことです。本書の「はじめに」で、ロビンソン夫妻は次のように述べています。
私達は1995年に『パフォーマンス・コンサルティング』を出版した。それ以来、HR、ラーニング、組織開発の専門家がパフォーマンス・コンサルタントの役割を果たせるように協力してきたが、その数は数千人になる。その中で最も多かった質問は「経営陣に戦略レベルのことで相談したいと思ってもらうには、どうすればよいのですか?」というものだった。この質問に答えるために私達が探究してきた成果が本書である。
ということで、本書ではクライアントと信頼関係を築いていくためのACT(Access:接点をもつ、Credibility:信用を得る、Trust:信頼まで高める)モデルを詳しく解説しています。
具体的な戦略レベルのプロジェクトを見つけるときの実践ツールとしては、ニーズの階層構造、Gap Zapper、GAPS!マップなど、そして、クライアントの要望を深掘りするスキルとしてリフレイミングのスキルを解説しています。
またオタク的になりますが、本書以降「4つのニーズ」は「ニーズの階層構造」と名称を変えています。また、「パフォーマンス相互関係マップ」に替えて「GAPS!マップ」を活用しています。
これはHandbook of Human Performance Technology(第3版)第38章の論文です。学習部門からパフォーマンス改善部門に移行するときのステップとその留意点を解説しています。
ロビンソン夫妻は「学習部門からパフォーマンス改善部門に移行するにはどうすればよいのか?」とよく質問されてきたと言っています。Performance Consulting second editionの第10章の中でも取り上げていますが、そこでもこの論文が役に立つと述べています。
本論文では、この移行について次の5つのステップで解説しています。
興味深いのは、この5つのステップで難しいことや陥りやすいことをわかりやすく解説していることです。
たとえば、パフォーマンス改善部門として新しいミッションステートメントをつくり、部門名を変え、スタッフが必要なスキルを習得しても、業務フローや組織構造が学習部門のときと同じであれば、活用するアプローチは変わらない、といったことです。
もうひとつ例をあげれば、パフォーマンス・コンサルタントが事業のトップに働きかけて戦略レベルのプロジェクトを見つけようにも、事務処理レベルの仕事を減らしていないため、その時間がとれず、単発の学習ソリューションの要求に応じてしまう状況が続く、といったこともあげています。
『パフォーマンス・コンサルティング(初版)』の第4部と比べると、初版以降の支援実績に基づいた具体的な内容になっていると思います。特に、ステップ2ではパフォーマンス改善部門の業務プロセスを明確に示し、SBPのACTモデルを入れて信頼関係構築のフェイズを解説しています。また、ステップ4ではパフォーマンス・コンサルタントに必要なコンピテンシを初版より詳しく解説しています。
最後の方で、この移行は変革というより進化とみよう、と言っているのが印象的です。
余談ですが、2009年のASTDでは、医薬メーカーのジェネンテックにおけるパフォーマン改善部門への移行事例が紹介されていました。
本書はロビンソン夫妻の25年間のコンサルティング活動の集大成であり、1995年以降ずっと進化してきた「パフォーマンス・コンサルティング」のすべてをまとめたものと言えます。ここで紹介してきた著作のエッセンスのほとんどが統合されています。
この本ではパフォーマンス・コンサルティングの全体像がたいへんわかりやすくなりました。まず、メンタルモデルとして、ニーズの階層構造、Gap Zapper、GAPS!マップ、GAPS!ロジックを解説しています。そして、パフォーマンス・コンサルティングのプロセスの全体像を見た上で、科学的なアプローチと匠のアプローチを解説しています。
科学的なアプローチとは、上記メンタルモデルを活用しながらShould-Is-Causeの流れでパフォーマンスギャップの原因を解明し、ソリューションを選択するまでのプロセスを合理的に進めることです。パフォーマンス・コンサルティングの実践ツールをどう活用していくのか、概念的なフレームを解説しています。
一方、匠のアプローチとは、クライアントの要望(研修やボーナス設計など)を受けてその背景にある事業ニーズなどを確認し、パフォーマンス・コンサルティングのプロジェクトを確立していくときの対応スキルのことです。SBPでもふれたACTモデル、リフレイミングのスキルの活用の仕方を解説しています。さらに、自ら積極的に戦略レベルのプロジェクトを見つけていくときのコツについても1章割いています。
事例もグローバルになり、その数も8つに増えています。
21世紀はグローバル競争が続きます。その中で、HRとラーニング部門が「人のパフォーマンスを改善することで事業に貢献する」ときに、パフォーマンス・コンサルティングは両部門に共通のプロセスになるだろうとロビンソン夫妻は述べています。
本書の内容は『パフォーマンス・コンサルティング(初版)』とは99%異なります。Strategic Business Partnerで登場した演習や内容の一部が本書に出てきますが、これらはすべて書き直されています。これまでの著書とまったく同じ文章はほとんど見当たりません。
第3版の著者にはロビンソン夫妻にROIのフィリップス夫妻とDick Hanshawが加わりました。彼らに共通の思いは、「人と組織にかかわるソリューションを通じて事業成果に貢献する」ということです。
本書では、パフォーマンス・コンサルティングの定義、プロセス、主要モデルなどが微修正され、実践事例がほぼ一新されました。
構成は実践プロセスにそった時系列になっており、前半2/3はパフォーマンス・コンサルティング、後半1/3はROIを解説しています。つまり、第2版までがパフォーマンス現状分析中心の内容だったのに対し、ソリューション設計段階から効果測定の準備を始め、実施後に報告するまでの「最初から最後まで」を一冊にまとめたと言えます。
視点としては、L&D(Learning and Development)、HR、ODを統合している感じです。たとえば、職場環境ニーズが「組織能力ニーズ」になっていたりします。
かなり単純化して言えば、ロビンソン夫妻は第2版を思い切ってスリムに170ページくらいにまとめ、フィリップス夫妻はROIの解説を80ページくらいにまとめ、HandshawはGapsマップやリフレイミングの質問などパフォーマンス・コンサルティングのツールを活用した実践事例を紹介したという感じです。
鹿野 尚登 (しかの ひさと)
1998年にパフォーマンス・コンサルティングに出会い、25年以上になります。
パフォーマンス・コンサルティングは、日本企業の人事・人材開発のみなさまに必ずお役に立つと確信しています。
代表者プロフィール
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