2010.7.21
研修成果を高めるためには、まず「どのようなときに人の行動が変わるのか」という大前提、仮説を変える必要があります。従来の人材開発には、下記の図のように「個人の意識が変わり、スキル・知識を習得すれば、望ましい行動に変わる 」という前提があります。
しかし、本来的に人間の行動はそう簡単に変わりません。ひとりでも部下を持った経験がある方は、人の行動を変えることの難しさはおわかりでしょう。また、家庭のある方は、伴侶やお子さんの行動を変えることがどれほど大変か日々実感されているでしょう。それなのに、なぜか、研修になると「研修をすれば望ましい行動に変わる」という楽観的な前提が生まれます。
この前提を別の角度で表現をすると次のようになります。
冷静に考えれば、研修後に①のように右肩上がりで改善するというシナリオ以外に、②~④のいずれのシナリオも考えられます。①はムリだとしても、少なくとも②くらいの変化を期待するのが人情です。しかし、現実はなかなか厳しいものです。
最初に見た「個人の意識が変わり、スキル・知識を習得すれば、望ましい行動に変わる 」という前提の前提を考えると次のようになります。「問題(原因)は従業員個人にある。従業員の行動が変われば、業績はよくなる」。
現実はどうでしょうか?問題は従業員にあると思って、「すばらしい講師で、すばらしい研修をしたのに従業員の行動は変わらない」「評判のよい研修を実施したのに、なかなか業績があがらない」という話を聞きます。このような話は昔からありますが、これは上記の前提ではうまくいかないことを示しています。
では、なぜこうなるのでしょうか?
ひとつは、研修よりも従業員が働く職場環境の影響力の方が強いからです。従業員は職場の中で仕事をしており、上司、同僚、仕事で使うツール、業務の進め方そのもの、情報システム、評価やインセンティブの仕組みなど、多くの職場環境要因の影響を受けています。従業員はこの職場環境の中で日々実務を行っています。もし、従業員がよい研修を受講しても、職場環境にそれを活かそうとする何らかの要因がなければ、その効果はないでしょう。さらに言えば、問題は従業員ではなく、職場環境であれば、従業員を対象とした研修は的外れなソリューションということになります。
もうひとつ考えられるのは、個人の行動は一人ひとりの信念や価値観に基づいており、それらはなかなか変わらないということです。いくら終了アンケートがよくても本気で実践しようと思っている人は意外に少ないのかもしれません。研修やワークショップの中には、様々な手法を用いて各人のものの見方・考え方を問い直すものもありますが、すべての研修でそこまでアプローチするのは難しいでしょう。
いずれにしても、「個人の意識が変わり、スキル・知識を習得すれば、望ましい行動に変わる 」といった仮説だけでは不十分です。少なくとも「研修をすれば望ましい行動に変わる」という楽観的な前提は見直すことが必要でしょう。
まとめるとこうなります。単発の研修だけで従業員の行動が変わることを期待するのは虫がよすぎる、ということです。逆に言えば、本当に行動の変化を求めるのであれば、職場環境にも手を打つことが必要だということです。
パフォーマンス・コンサルティングでは「人の行動と成果に影響する要因は、従業員個人の要因だけでなく、職場環境要因などがあり、スキル・知識の習得だけでは変わらない 」という前提に立ちます。そして、職場環境に手を打つための分析モデルやツールがあります。
研修成果を高めたいのであれば、設計段階から従業員個人と職場環境の両方を視野に入れておきましょう。
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鹿野 尚登 (しかの ひさと)
1998年にパフォーマンス・コンサルティングに出会い、25年以上になります。
パフォーマンス・コンサルティングは、日本企業の人事・人材開発のみなさまに必ずお役に立つと確信しています。
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