ASTD 2009 報告-③パフォーマンス・コンサルティングと
タレントマネジメント

 2009.8.16

ロビンソン夫妻は、『Performance Consulting second edition』2008のClosing Thoughtsで、タレントマネジメント(Talent Management)について次のように述べています。

 

「次の動きも将来性があり、ワクワクしている。それは『タレントマネジメント』という部門が編成され始めていることだ。今後、タレントマネジメントの分野は、HRと学習部門の間にあった縦割りのサイロの壁を時代遅れのものとしていくだろう。
・・・・・
現在、優秀な人材の採用から、新規採用者の教育(On-boarding)、人材開発、キャリア開発、リテンションまでを業務のプロセスとする組織が増えている。タレントマネジメントはHRと学習部門が共有するひとつの目標になってきているのだ」

 

そして、ロビンソン夫妻は、パフォーマンス・コンサルティングはHRと学習部門で共有できるプロセスだと述べています。

そんなこともあり、タレントマネジメントもオンボーディング(On-boarding)もよく理解しないまま、関連がありそうなPepsi Bottlingの事例とQualcommのCLOのセッションに参加しました。

 

W214 Preparing New Leaders for Success:
The Pepsi Bottling Group Story ペプシ事例

 

このセッションはPepsi BottlingのGM(General Manager)を対象としたOn-boardingの事例発表でした。一言で言えば、新任GMを早期に、スムーズに成功させ、即戦力化するために極めてシステマティックな育成の仕組みをつくった、というものです。運用を始めてまだ1年半ということでした。

新任GMは、 2700万ドル/月の売上、70人の人、300万ケース/月を扱い、毎年100人程度この任に就くそうです。

 

このOn-boardingの設計原則は、
上級管理職とのアラインメントをとる
既存のフレーム(コンピ、リーダーシップモデル)を最大限に利用する、
staggeredアプローチ=さまざまな学習方法を使う
OJTとピアコーチングを活用する、というものでした。

 

文字にすると当たり前という気がしますが、よく考え抜かれていると思いました。

非常に印象に残ったのが、実務を通じた学びやインフォーマルな学びを構造化しているところです。

たとえば、任用0-19日(導入フェイズ)の間に職務の目的をガイドブック(GM Playbook)で学ぶだけでなく、優秀なGM(ハイパフォーマー)が事業計画を立案する過程を観察し、毎朝・毎夕、ピアコーチングを受けるのです。


さらに、実務で関係する各部署(サプライチェーン:製造~販売~流通~サービス)のキーマン、分野ごとの専門家(SME)と顔合わせを行うことで人脈をつくり、業務の全体像が分かるようにしています。新任GMがわからないことをこうしたキーマンや専門家に質問させることが学習目的の一つとなっているようです。

 

また、時期に応じていろいろな学習が用意されていることも印象的でした。
たとえば、任用14-90日(現状分析フェイズ)の間には、コンピと連動したアセスメントを行って自分や部下の強みを発見します。次の90日は(強化フェイズ)で、GM大学での研修やEランが始まると言った感じです。次の90-150日は(維持継続のフェイズ)で、GMとしての重要な成果責任を発揮していきます。たとえば、事業計画を自分で策定し、経営幹部とのやりとりをするといった具合です。

 

正確な理解に欠けるところが多々ありますが、概要はこんな感じだったと思います。コラム「人材開発のフレームを持とう」で述べましたが、このような育成の仕組みは事業戦略と人材開発、人事と人材開発、人事・人材開発の施策間、という3つの連動性を強く感じさせるものでした。

ロビンソン夫妻が指摘している「HRと学習部門の機能が融合している姿」とはこのような状態なのかもしれない、と思いました。

 

W303 Beyond Learning: A Leadership Perspective
Qualcomm事例

 

昨年のセッションでは、ElkelesさんはQualcommの人材開発部門を2~3人で立ち上げ、会社の成長に伴って今では50人規模の部門になっている、と言っていました。また、ロビンソン夫妻の『Performance Consulting』とBrinkerhoffの『Success Case Method』をラーニング部門のテキストにしている、とも言っていました。

 

"Beyond Learning”というセッション・タイトルのとおり、発表内容は学習という枠を大きく超えていました。情報量が非常に多くて消化不良でしたが、主な主張を思い切って要約すると以下のような感じだと思います。

経営陣はCLO(Chief Learning Officer)にタレントにかかわる多くのことを期待しています。具体的には、

 

  1. タレント人材の要員計画
  2. タレント人材のアセスメント
  3. タレント人材の異動
  4. タレント人材予備軍(パイプライン)の分析


などです。

一般的にタレントマネジメントは幹部やハイポテンシャルの一部の人材しか対象にしていませんが、経営陣は企業全体のタレントをやりくりしたいと思っています。ある調査によると、8割の組織はタレントを十分に活用していないと答えています。

そこで必要になるのは、事業の成長を促すタレントを発見し、育成し、活用し、維持していくための具体的な仕組み——タレントレビューのしくみやツール、プロファイル、タレントレビューの実施運用、ローテーションの仕組み、管理指標、幹部によるタレント委員会など——です。

 

組織レベルの施策としては、
タレント人材の要件だし、人材発掘、適切な人材を惹きつける、将来の成功に向けてタレント計画などがあります。

 

従業員個人レベルの施策としては、
トップタレントの発掘、重要なスキルの特定、キャリアの関心を把握、能力向上、戦略遂行のための能力開発、ローテーションなどがあります。

 

経営陣はCLO(Chief Learning Officer)に多くのことを期待しています。CLOが組織に貢献するチャンスはたくさんあります。


たとえば、人材を「新卒、新規採用者、幹部、ハイパフォーマー」の観点で評価分析したり、高い業績を上げている人材のプロファイルで再現できる部分を見つけたりすることができます。パフォーマンスや生産性を最大化するためにタレント人材を異動させることもできます。また、タレント人材が失敗する要因を見つけて、失敗を最小限にすることもできます。こうしたタレント人材についての分析結果をもとに従業員にかかわるデータを幹部に伝えることができるのです。

ElkelesさんはQualcomm社のタレントマネジメントの具体的な取り組みについても詳しく紹介していました。


印象に残ったことが3つあります。


ひとつは、幹部によるレビューで、個人の能力の発揮度合い、強み、キャリアの方向性、不適合の可能性、育成の方法などをしっかり話し合っていることです。その上で個人の能力開発計画を上司と部下が一緒に作っています。
話が脱線しますが、日本の企業でも評価者会議で同様のことがしっかりと話し合われていればいいなぁと思います。

 

ふたつ目は、タレントマネジメントがうまく行われているかどうかを見る以下のような指標を設定していることです。

  • 取り組み指標
    育成計画のある後継者予備軍%、育成の取り組みが終了した予備軍%、リテンション%など
  • 成果指標
    後継者計画の充足率%、待機中の後継者増加率%、新しく後継者計画の対象になった人材増加率%。

 

3つめは、入社後の業績の追跡調査をしていることです。たとえば、新卒の出身大学別、最終学歴別にその後の業績評価との相関を分析していることです。また、ヴァイスプレジデント以上で会社を辞めた人、3年以上勤務して辞めた人の退職理由をインタビューもしています。そのインタビューは様式が決まっており、HRかマネジャーが行うそうです。

余談ですが、この幹部の「退職理由」のひとつに「幹部用のOn-boarding」があげられていました。

 

Pepsiに続き、このQualcommの事例もロビンソン夫妻が指摘している「HRと学習部門の機能が融合している姿」だと思いました。また、このプレゼンを聞いていて、ラルフ・クリステンセン『戦略人事マネジャー』2008の内容そのものだとも思いました。

ヒューマンパフォーマンスはパフォーマンス・コンサルティングを実践します。

人にかかわる施策、人材開発と事業戦略の連動性を高め、業績向上に貢献することがテーマです。研修効果で悩んだことがある方には有効なフレームワークです。人材開発のあり方や研修の見直しを検討されている人材開発担当の方におすすめです。
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代表者プロフィール

鹿野 尚登 (しかの ひさと)

1998年にパフォーマンス・コンサルティングに出会い、20年になります。
パフォーマンス・コンサルティングは、日本企業の人事・人材開発のみなさまに必ずお役に立つと確信しています。

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