小社で支援しているパフォーマンス現状分析のプロジェクトで最近多いのは、2~3ヵ月くらいの期間です。
変動要素として大きいのは、①インタビュー対象者数、②パフォーマンスモデルの行動項目数、③アンケートの人数、④分析の進め方の4つです。
たとえば、ターゲット従業員がマネジャー(課長層)だとすると、ハイパフォーマー課長6人、平均的な課長3人、上司(部長や本部長)3人の12人くらいにインタビューします。このインタビューの対象人数が20人に増えたり、地方拠点に出張したりする場合は、時間がかかります。
また、パフォーマンスモデルの項目数も25項目の場合と77項目の場合では、その集計と分析にかかる時間が変わります。項目が多くなればそれだけ時間がかかります。
さらに、アンケートの人数が少なければそれだけ集計も早くなりますし、100名単位になればそれなりに時間がかかります。とはいえ、ある程度の人数のデータがなければ統計的にはやや心配になります。
分析の進め方も、弊社がある程度分析したものを検討いただく場合はそれほど時間はかからないと思います。一方、貴社のスタッフと重要行動一つ一つに対してワークショップ的に原因をじっくり深掘りしていく場合は時間がかかります。
パフォーマンス現状分析の結果、研修やツールなどの解決策を開発する場合は、解決策を開発する別のプロジェクトとして改めてお見積り・スケジュールについてご相談します。
最近、小社でお手伝いしているのは500人くらいの事業部や部門組織が多くなっています。とはいえ、ターゲット従業員はその一部なので、人数は絞られてきます。以下は、最近支援したパフォーマンス現状分析プロジェクトの概要です。
小社が支援した最近のパフォーマンス現状分析プロジェクト
A | B | C | D | |
企業規模 | 2000人 | 2000人 | 1万人 | 1万人 |
対象組織 | 事業部 | 営業部門 | 事業部 | 事業部 |
期間 | 4ヵ月 | 4ヵ月 | 3ヵ月 | 2ヵ月半 |
ターゲット従業員 | マネジャー | マネジャー | マネジャー | マネジャー |
パフォーマンス モデル | 8成果 77行動項目 | 6成果 25行動項目 | 6成果 26行動項目 | 6成果 26行動項目 |
現状把握アンケート サンプル数 | 1回目約30人 2回目約40人 | 約40人 | 約230人 | 約140人 |
パフォーマンスモデルの開発やその後の現状把握アンケートのことを考えれば、ターゲットの従業員の人数がある程度まとまっている方が費用対効果も高いと思います。
ただし、テーマによっては対象人数が少なくてもパフォーマンス現状分析をする必要性や価値が高い場合もあるでしょう。
確実に言えるのは、従来の人材開発のやり方でなかなか成果があがっていない場合は、組織の規模によらずパフォーマンス現状分析は一考する価値があると思います。
パフォーマンス・コンサルティングは、インストラクショナルデザインと並んで、人材開発の基本になっています。
2019年版のATDコンピテンシー調査では、今後3~5年間で人材開発担当者に重要なコンピテンシーとして、パフォーマンス改善(パフォーマンス・コンサルティング)、コンサルティング・パートナリングが上位に入っています。
Robinson夫妻の『Performance Consulting』('95、初版)は今や古典的な扱いになっています。2015年に、ROIで有名なPhillips夫妻他との共著で第3版が出版されました。
ISPIのHPT(Human Performance Technology)、ATDのHPI(Human Performance Improvement)といろいろ呼び方がありますが、逆に言えばそれだけ一般的になってきているということだと思います。
1995年初版
2008年第2版
2015年第3版
2011年のASTDカンファレンスでは現代自動車、2009年には医薬のジェネンテックなど、過去多くのパフォーマンス・コンサルティングの実践事例が紹介されてきました。
もう少し情報がほしい方は、以下もチェックしてみてください。
-A T D 2015報告-パフォーマンス・コンサルティング 3.0
-ASTD 2014報告− パフォーマンス・コンサルティング+インストラクショナルデザイン
-ASTD 2013報告−これからの人材開発担当者に求められるコンピテンシー
-ASTD 2011報告 現代自動車のパフォーマンス・コンサルティング
-ASTD 2010報告 パフォーマンス・コンサルティングの浸透
ロビンソン両氏はパフォーマンス・コンサルティングの実践を続けながら分析ツールやモデルを進化させています。初版ではわかりづらかったパフォーマンス問題の原因分析やクライアントに問いかけをするときのメンタルモデルなど、多くのことを改善しています。
2002年に出た邦題『1分間問題解決』を読んでいただくと、4つのニーズ、GAPS!ロジックの活用の仕方がよくわかります。パフォーマンス・コンサルティングの本質が短時間で理解できると思います。
2005年のStrategic Business Partnerを読んでいただくと、GAPS!マップとその活用の仕方がご理解いただけると思います。
そして、2008年に出たPerformance Consulting second edition (邦題『パフォーマンス・コンサルティングⅡ』2010年)では、上記2冊で紹介してきた最新のモデルやツールについて事例を交えながらわかりやすく解説しています。
さらに、2015年に出たPerformance Consulting third editionでは、ROIのフィリップス夫妻やDick Handshawと一緒にパフォーマンス・コンサルティングの支援のきっかけをつかむところからソリューションを実施して効果測定し、その報告をするところまでを再度整理しました。第2版での定義やモデルなどが微修正され、最新の実践事例が紹介されています。
初版から具体的に何がどのように変わっているのかは、パフォーマンス・コンサルティングのモデル・ツールの進化 と - ATD 2015報告-パフォーマンス・コンサルティング 3.0をご確認ください。
L&DとはLearning & Developmentの略で、人材開発部門のことです。かつて'90年代はHRD(Human Resource Development)と呼ばれていましたが、今はL&DとかTD(Talent Development)とか呼ばれることが多くなっているようです。
HRDは文字通り人材開発という漢字が当てはまると思いますが、TDは「人財」開発という語感があるような気がします。L&Dは適切な訳語がまだないと思います。
というのも、Learningの内容は、オンラインでの学び、職場の実務を通じた学び、同僚や社外の友人などとのFacebookやtwitterを通じた学びなど概念が広がっているからです。最近のハーバード大やINSEADが企業と共同開発したオンライン学習は、まさにこれらが融合するように最初から設計されています。
L&D for L&Dというのは、平たく言えば「人材開発部門の人材開発」のことです。今や人材開発スタッフが学ぶべき領域が広がり、必要な専門知識が増えていることが背景にあると思います。
人事・人材開発のスタッフが自己啓発で最新のトレンドを学ぶのは当然だとは思いますが、それに加えて年に一度くらいは部門をあげて「デジタル化が進むL&D」や「L&Dの基本」を学ぶことが必要になっているのかもしれません。
→ATD 2019ケイパビリティモデル-これからの人材開発担当
パフォーマンス・コンサルティングⅡ
研修効果にこだわる人事・人材開発スタッフには、おすすめの一冊。人材開発部のビジネス志向を高めるための具体的なフレームを整理した本です。
人材開発の上流で役立つ情報が満載です。
鹿野 尚登 (しかの ひさと)
1998年にパフォーマンス・コンサルティングに出会い、25年以上になります。
パフォーマンス・コンサルティングは、日本企業の人事・人材開発のみなさまに必ずお役に立つと確信しています。
代表者プロフィール
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