パフォーマンス・コンサルティングとは、経営幹部と人材開発スタッフが協働して事業目標の達成に役立つパフォーマンス(カギとなる従業員の実務行動と成果)を明らかにし、それらを促すことで、組織の業績向上に貢献するプロセスのことです。
パフォーマンス・コンサルティングはソリューションそのものではありません。人にかかわる問題の適切なソリューションを見つけ出し、実行し、効果測定をするまでの一連のプロセスです。端的に言えば、人事・人材開発スタッフが事業ラインに対する業績貢献を高めていくための仕事の進め方です。
よくある人材開発とパフォーマンス・コンサルティングの主な違いを対比させて比較表にすると以下のようになります。わかりやすくするために、「よくある人材開発」はデフォルメしていますが、ご容赦ください。
最大の違いは、焦点です。
よくある人材開発は、「よい研修」をたくさん実施することに重点があります。一方、パフォーマンス・コンサルティングは事業成果に結びつく実務行動を促進することに焦点があります。効果測定の4レベルで言えば、最初から3レベル以上に焦点があるわけです。
次に、「どのようなときに人の行動が変わるのか」という大前提、仮説が大きく異なります。
このような焦点や大前提が異なるので、以下のニーズ把握、プロセス、ソリューション、効果測定の考え方や手法が違うものになるわけです。
ざっと見て、「なんだか人材開発部の仕事の枠を超えているなぁ」とお感じになると思います。それものそのはずで、1995年に『パフォーマンス・コンサルティング(初版)』が出たときの原書タイトルは、“Performance Consulting: Moving Beyond Training”でした。拙訳のサブタイトルは、「人材開発部門は研修提供から成果創造にシフトする」としています。
パフォーマンス・コンサルティングの本質はシンプルです。
一言で言うと下図にあるように、ターゲットの従業員に「業績向上につながる行動を促し、成果を高める」ようにすることです。
ここで言う「行動」は職場で行っていること、実務行動のことです。
詳しくは、下記リンクをご覧ください。
基礎知識-パフォーマンス・コンサルティングとは?
基礎知識-パフォーマンスとは?
といっても、いきなりどのような行動が業績向上につながるのかわかりません。
そこで、業績向上の前提、つまり、事業として目指すこと(事業目標)を明確にします。
次に、この事業目標の達成につながる行動について、インタビューなどを通じて明らかにします。
こうして目指すべき業績(事業目標)とその達成につながる行動がわかったところで、現状のギャップを明らかにします。
組織の業績と従業員のパフォーマンスとのギャップが明確になったら、次はそれらの原因をインタビューやアンケートを通じて明らかにします。そのときに、単に知識やスキル不足といった従業員の内的要因を原因とするのではなく、職場環境の要因も分析していきます。
現状には、業績向上につながる行動が発揮されない何らかの要因があるのです。
基礎知識-パフォーマンスが低い原因は何か?
原因がわかれば、それらに対応する解決策を選択して実行することができます。
とはいえ、解決策は必ずしも研修になるとは限りません。期待成果があいまい、インセンティブが逆効果など職場環境に問題があれば、それらを取り除く解決策が必要になるのです。
詳しくは、下記リンクをご覧ください。
基礎知識-パフォーマンスを改善するためには?-促進要因・阻害要因
最後はその効果を確認します。
パフォーマンス・コンサルティングは、以上のように従業員のパフォーマンス(行動と成果)を改善することによって、組織の業績を高めていく一連のプロセスです。焦点は、ターゲットの従業員の行動です。
パフォーマンス・コンサルティングでは、業績向上につながる行動を促す、適切な解決策を見つけるまでのプロセスを非常に重視しています。というのは、解決策を間違えればあとで高くつくからです。
パフォーマンス・コンサルティングの特徴・プロセス・成果物
パフォーマンス・コンサルティングは先に述べたように、従業員の行動に焦点を当てて業績を改善していくアプローチです。したがって、かなり応用範囲は広いということになります。
たとえば、以下のようなことをトップやラインマネジャーがぼやいていらっしゃるようなときです。
上記のようなラインマネジャーの悩みに対し、人事・人材開発スタッフがパフォーマンス・コンサルティングのモデルやツールを使いながら、一緒に問題を解決をしていきます。
もっと日常的なシーンで言えば、次のような発言が出ているときです。
「営業力強化するために営業全員に研修でもやったらどうか?」
「若手のマネジャーの指導力が足りない。マネジメントの勉強をさせたらどうか?」
あなたが経営者であれ、事業部長であれ、人材開発スタッフであれ、
「この研修を実施するだけで、今議論されている問題は解決されるのか?」
という問いに「YES」と答えることができなければ、まさにパフォーマンス・コンサルティグを実践するタイミングです。
パフォーマンス・コンサルティングは研修やEランを発注する側の経営者、事業部長などのラインマネジャーに問いかけてきます。
「この研修や学習施策を実施することで、懸念されている問題が解決されるのですか?」
「この研修や学習施策を実施することで、従業員の行動の何をどのように変えたいのですか?研修だけで本当に行動は変わるのですか?」
パフォーマンス・コンサルティングは研修やEランを企画・開発・実施する側の人材開発スタッフに問いかけてきます。
「人材開発部門はよい研修をたくさんやっていればよいのですか?」
「業績向上に貢献する人材開発部門になりましょう」
パフォーマンス・コンサルティングは、21世紀のグローバル競争の中で、人事・人材開発部門の基本フレームだと思います。以降のお役立ち情報が参考になれば幸いです。
また、パフォーマンス・コンサルティングの実践をご検討されるときにはご支援申し上げます。
もっと詳しいことが知りたい方は、パフォーマンス・コンサルティングの基礎知識をどうぞ
パフォーマンス・コンサルティングの考え方を実践的に理解したい方、
人事・人材開発の実務にどう応用するのかを知りたい方は、下記リンクをご覧ください
海外の事例が知りたい方はこちらへ
ASTD 2009 パフォーマンス・コンサルティング事例
パフォーマンス・コンサルティングⅡ
研修効果にこだわる人事・人材開発スタッフには、おすすめの一冊。人材開発部のビジネス志向を高めるための具体的なフレームを整理した本です。
人材開発の上流で役立つ情報が満載です。
ヒューマンパフォーマンスはパフォーマンス・コンサルティングを実践します。
人にかかわる施策、人材開発と事業戦略の連動性を高め、業績向上に貢献することがテーマです。研修効果で悩んだことがある方には有効なフレームワークです。人材開発のあり方や研修の見直しを検討されている人材開発担当の方におすすめです。
お気軽にお問い合わせください。
鹿野 尚登 (しかの ひさと)
1998年にパフォーマンス・コンサルティングに出会い、25年以上になります。
パフォーマンス・コンサルティングは、日本企業の人事・人材開発のみなさまに必ずお役に立つと確信しています。
代表者プロフィール
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