ASTD2010報告-パフォーマンス・コンサルティングの浸透

2011.05.04 

2010年のASTDでもパフォーマンス・コンサルティングの浸透を感じました。ASTDではHPIと言われますが、基本的な考え方やプロセスは同じです。取り上げるのは次の3社の事例です。正確に聞きとれていないところが多々ありますので、概要としてご理解ください。

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1.イスラエル割引銀行
Use of Learning Capsules to Improve Business Performance

イスラエルの割引銀行のリテール部門において、パフォーマンス改善をした事例発表です。問題の分析からソリューションの選択、効果測定まで一連のプロセスに取り組んだ15か月のプロジェクトでした。

この銀行は従業員1.7万人、145支店と大きく、ターゲットになったのは120支店の小口融資・リテール部門の従業員1200人でした。この銀行には行内カレッジもあるということでした。発表者はこの銀行のインストラクショナルデザイン部門の人と外部コンサルタントの2人でした。

 

①現状分析


このプロジェクトに取り組む前は、本来は融資できないは顧客に融資し、損失が生まれていました。その一方で、本来は融資できる顧客なのに融資をせず、不満を生むという問題がありました。

言うまでもありませんが、パフォーマンスのあるべき姿は、顧客の特性に合った与信をするということです。

問題を定義し、その原因を分析するために、マネジャー・従業員それぞれに対し、フォーカスグループを実施し、店頭での業務を観察しています。そして、40の問題を明らかにし、優先順位をつけて、重要度の高い12の問題に絞っていました。

原因は、従業員に業務知識が不足しており、手順どおりに仕事をしていないということでした。

 

②ソリューションの選択・開発・実行


この12の問題に対し、12の学習カプセル(痛みに対する薬のたとえ)を開発しています。いわば、シリーズもののソリューションを開発したというわけです。具体的には以下のようなものです。

  • 5分程度のビデオ教材:
    笑える楽しいビデオ。12の問題を取り除くために、ものの見方・考え方を変える内容。
  • チームディスカッション:
    窓口チームのメンバーとマネジャーが一緒にビデオを見た後、話し合う。
  • ジョブエイド:
    パソコンの画面上に出てくるツール。
  • Weekly Challenge:
    1週間ごとに業務知識を問うコンピュータ・ゲームを実施。
  • コーチによる現場指導

上記のソリューションをみると、現場のことをよく考えていることがわかります。①楽しく学習できる工夫があり、②上司も巻き込んでいます。そして、③パソコンの画面上に業務知識のアンチョコが出てきます。さらに、④記憶を定着させるためのゲームまであります。

 

③効果測定


効果測定は3ヶ月後に、テストを実施して知識の保有度を確認するというものでした。さらに、マネジャー137人が従業員の行動変化をみて、86%が効果を認めたということです。

一見すると目新しさはないかもしれませんが、パフォーマンス・コンサルティングの「現状分析→ソリューションの選択・開発・実行→効果測定」のプロセスをしっかり実践しています。また、学習にかかわるソリューションと職場環境に対するソリューションをうまく組み合わせているところも教科書どおりです。パフォーマンス・コンサルティングは中東までしっかりと浸透していることを改めて感じました。

 

2.ING
Measuring Added Value of Training: Easier Than You Think

オランダの金融グループINGの支援をしたコンサルタント2人による事例発表でした。彼らはING以外に、Phillips、Shellなど、オランダの大手企業を支援していると言っていました。

この事例でパフォーマンス・コンサルティングが欧州にも浸透していると思ったのは、次のエピソードです。発表者のひとりは、かつて研修効果に悩んでいたそうです。そして、7年前にHPIのコンセプトにふれて魅力を感じ、延べ50日くらいASTDのワークショップに参加し、HPIのCertificationをとったと言っていました。

 

①現状分析


2006年ごろ、INGはグローバル競争の環境の中、経営効率を高めるため、トヨタのLEANマネジメントを取り入れようと考えたそうです。特に、①コスト・品質・時間に関連する指標による管理、②従業員による問題解決を促すエンパワメントを範とすべきと思ったようです。

 

②ソリューションの選択・開発・実行


そこで、150人のマネジャーにLEAN(6シグマ)の方法論と新しいマネジメントスキル(コーチングやボトムアップのチーム・リーダーシップなど)を教育することが必要になったわけです。とはいえ、研修は望まれなかったため、6人1グループでパフォーマンスコーチングを一定期間行うというソリューションを選択していました。

 

③効果測定


カークパトリックの4レベルで効果測定する上で、HPIの考え方を参考にし、下記のような基準を明確にしています。

成果=6つのKPI(最初に定義)で判定
行動=KPIの向上に役立つと検証されたES6項目を部下が判定
学習=3つのマネジメントスキルについて、グリーンベルト相当か、
   トレーナーや同僚同士で判定
反応=すべてのセッションの満足度

業績を6週間ごとに測定して8カ月間追跡し、スキルも8か月後に判定したとか、4年間フォローして成果を確認するなど、ソリューション実施後の成果を丁寧に追いかけていました。また、従業員にサーベイをとり、マネジャーのフィードバックの仕方が「批判的、ほめない」から「パフォーマンス中心でほめる」ポジティブなものに変わったことも確認したようです。

 

この事例では、最終的な成果を事業目標のKPIで定義し、KPIの改善に役立つと裏づけが取れたESサーベイ項目で行動の変化をみるというところが印象に残りました。というのは、「事業目標とターゲットの従業員のパフォーマンス」を一義的に考えることがパフォーマンス・コンサルティングの基本だからです。マネジャーの行動変化をみる上で、マネジャーの行動そのものを従業員に聞くだけでなく、その結果である従業員のESを重視している点もナルホドと思いました。

 

3.ブリストル・マイヤーズ・スクイブ
Aligning Leadership Development With Global Strategy

医薬品メーカー、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(以下BMS)のタレントマネジメントの事例でした。ターゲットはGMです。BMSの人と2009年のペプシの事例を発表したHUDSONのコンサルタントが一緒に発表していました。

リーダー育成とパフォーマンス・コンサルティングは少し遠い感じがするのですが、HUDSONのコンサルタントのDervenさんが支援した事例では、パフォーマンス・コンサルティングを踏まえている気がします。具体的には、初期段階で事業ニーズをしっかり把握していること(現状分析)、ラインマネジャーを巻きこんで進めていること(クライアントとの協働関係)、多様なソリューションを組み合わせていることなど、いくつかパフォーマンス・コンサルティングの考え方が反映されていると思います。

 

①現状分析


BMSのGMは世界各国で営業や生産も含めて権限を持っているそうです。重要な責任は、財務成果を出すこと、マトリックス組織を運営すること、外部環境に対応すること、人材のリテンション・育成、高い業績を生み、コンプライアンス意識の高い組織文化をつくることです。GMには、グローバルかつローカル、戦略立案と実行、果断かつ協働など、両義的、相反する機能が要求されます。

従来のリーダー育成にはいくつか問題があったようです。オンボーディングに一貫性がなく、ときにはsink or swimだったり、地域によって孤立する人がいたり、バックグラウンドが多様でスキルにばらつきがあり、生産系と営業系の間に距離があったそうです。また、地域によってはフォーマルな育成がほとんどないという状態でした。

L&D部門は、戦略との整合性をとるために、幹部の支援を得て、ライン主導でGMアドバイザリ・カウンシルをつくっています。

その上で、ニーズアセスメント(現状分析)を丁寧にしています。背景にある戦略を業務文書で確認した後、初期インタビューを行い、それをもとにWebサーベイを実施しています。そして、Webサーベイの結果をもとに詳細なインタビュー行った後、GM育成カリキュラムのたたき台をつくり、関係者で検討し、カリキュラムを確定させるという流れです。

 

②ソリューションの選択・開発・実行

 

上記のような現状を踏まえ、オンボーディングの最初の90日を体系的に設計し、GMを孤立させないようにネットワークづくりを進め、ベスプラの共有を促しました。さらに、ピアコーチングを使って、GMのスキルを底上げし、部門横断でアイデアを出し合うことを奨励し、グローバルなカリキュラムを開発したというのが概要です。

カリキュラムの大きな柱は、①ブレンド学習、②経営幹部主導の研修、③ソーシャルネットワーキング、④ピアコーチング、⑤経営ダッシュボードを利用したオンボーディング、⑥バーチャルツール(GM向けのLearning & Collaboration Hubがイントラ上にあり、ラーニングマップ、ピアコーチング、フォーラム、ブログなどにアクセスできる)の6つです。

GMといっても、昇進前・新任・既任者で学習ニーズが違うので、個別のスキル診断結果をもとに育成プランを立てる感じです。新任GMは、国を超えて時間帯が同じ地域内で、ピアコーチングを受けるということで、グローバルな取り組みを実感しました。ピアコーチングの効果測定では、実施前後で業績指標をとるそうです。

 

学習ソリューションが中心の事例でしたが、インフォーマルな学びやクラス外の学びの環境が整備され、構造化されているところが印象に残りました。

 

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代表者プロフィール

鹿野 尚登 (しかの ひさと)

1998年にパフォーマンス・コンサルティングに出会い、20年になります。
パフォーマンス・コンサルティングは、日本企業の人事・人材開発のみなさまに必ずお役に立つと確信しています。

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