ロビンソン夫妻が提唱した「パフォーマンス・コンサルタント」は、企業内の人材開発スタッフの「役割」です。元々は肩書ではありませんし、外部のコンサルタントのことを言っているわけでもありません。
初版のPerformance Consulting(1995、拙訳『パフォーマンス・コンサルティング』2007年)で、ロビンソン夫妻は「トレーニング部門からパフォーマンス改善部門に変わる」ことを提唱していますが、その文脈で次のように述べています。
「伝統的なトレーナー」としての役割は、パフォーマンス・コンサルタントの役割へ進化しなければならないと考えている」(拙訳、P9)。
「役割は職務と違ってアウトプットによって定義されると考えている。したがって、ひとりの人間がいくつもの役割を果たすことがある。実際に、伝統的なトレーナーとパフォーマンス・コンサルタントの両方の役割を兼ねることができる」(拙訳、P24)。
ではどのような仕事をする人かと言えば、ここまで見てきたようなパフォーマンス・コンサルティングのプロセスを中心となって進める人です。具体的には、以下のような仕事に取り組む人です。
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上記の「パフォーマンス改善施策の開発・実行をマネジメントする」という部分で少し補足します。米国の企業では、研修を開発するインストラクショナルデザイナー、組織開発専門のコンサルタント、インセンティブやボーナスを設計するHRのコンサルタントなど、企業内に人事・人材開発関連の様々な専門家がいます。パフォーマンス・コンサルタントはすべての分野のソリューションを自分で開発できるわけではありません。そこで、こうした専門家の力を借りてパフォーマンス改善施策を開発し、実行するというイメージです。
ロビンソン夫妻は、パフォーマンス・コンサルタントの役割として、
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このふたつが重要だと強調しています(Robinson & Robinson, Performance Consultant:The Job. Handbook of Human Performance Technology second edtion, 1999)。
1999年
2002年
第2版 2008年
初版出版当時(1995年)はパフォーマンス・コンサルティングという概念そのものが新しかったので、パフォーマンス・コンサルタントという肩書はまだなかったようです。その後、このコンセプトの浸透とともに急速に広がっていったようです。HPI Essentials (ASTD, 2002, P2)では次のような記述があります。
「実のところ、名刺に『パフォーマンス・コンサルタント』という肩書をつけている人の多くは、本当の意味でHPIを実践していない」
「しかし、HRゼネラリスト、ODの専門家を自認している人で、本当の意味でパフォーマンス・コンサルタントという人を目にすることが多い」
上記から2000年前後の米国で、パフォーマンス・コンサルタントの実態がどのようなものだったのか、少し想像できます。
このようなことが背景にあったのかどうかわかりませんが、ISPIやASTDは、2002年頃からHPTやHPIの実践家に対し、それぞれCPT(Certified Performance Technologist)、CPLP (Certified Performance and Learning Professional)といった資格認定を始めています。
第二版のPerformance Consulting(2008、拙訳『パフォーマンス・コンサルティングⅡ』2010年)では、「今では何千という人がこの肩書をつけ、パフォーマンス・コンサルタントの役割を果たしている」(同P10)、「多くのHRや組織開発(OD)の専門家がパフォーマンス・コンサルタントを名乗らなくても、パフォーマンス・コンサルティングに関連したコンセプトやモデル、取り組みを活用している」(同P11)と述べています。
日本企業でも研修成果や人材開発施策の効果にこだわるのであれば、名称はどうであれ、こうした役割や機能を果たす人が必要になると思います。
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鹿野 尚登 (しかの ひさと)
1998年にパフォーマンス・コンサルティングに出会い、25年以上になります。
パフォーマンス・コンサルティングは、日本企業の人事・人材開発のみなさまに必ずお役に立つと確信しています。
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