2014.08.10
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人材開発の課題のひとつとして、「研修の効果」がよくあげられる。言いかえれば、「学んだことが職場でなかなか活用されない」という問題だ。パフォーマンス・コンサルティングもここに起点がある。
筆者は、現在、人材開発関係者が「学ぶべき基本」として、ふたつあると確信している。ひとつはID(Instructional Design:以下ID)、もうひとつはパフォーマンス・コンサルティング(Performance Consulting)である。IDは、効率的、効果的、楽しい学習を設計・開発するための学問だ。費用対効果の高い研修を開発する上で必須である。一方、パフォーマンス・コンサルティングは、IDが発展したHPT(Human Performance Technology)を基盤としており、受講者が学んだことを職場で活用し、組織の求める成果を高める施策をつくるコツやツールを体系化したものである。ただし、ここでいう施策は、研修だけでなく、職場のマネジメントや人事制度にかかわることも含んでいる。
パフォーマンス・コンサルティングが持つメッセージは三つある。ひとつは、「よい研修をたくさん実施すれば従業員の行動は改善し、業績が高まる」という従来の人材開発の前提を変えようということだ。なぜなら個人の知識・スキル・態度に働きかけるだけでは、なかなか人の行動は変わらず、業績改善につながらないからだ。
ふたつ目は、成果を高める人材開発のフレームを持とうということだ。結論を急げば、従業員のパフォーマンス(実務の行動と成果)に問題があるときには、最初に従業員個人の原因、職場環境の原因を分析し、それぞれの原因に対し、合わせ技で手を打つということだ。パフォーマンス・コンサルティングでは、職場環境要因を重視しており、分析を助けるわかりやすいモデルやツールを紹介している。
三つ目は、人材開発スタッフとして成果が高まる仕事の仕方をしようということだ。IDではADDIE(分析、設計、開発、実施、評価)というプロセスがあり、最初のA(Analysis)では想定受講者の置かれた状況や現状の分析から始まる。パフォーマンス・コンサルティングもほぼ同じプロセスであり、現状分析を非常に重視している。違うのは、分析対象に組織の事業目標や職場環境が含まれるところだ。そして、常に組織が求める成果とターゲットの従業員の実務行動に着目するところに違いがある。したがって、パフォーマンス・コンサルティングでは、かなり時間とエネルギーを注いで現状分析をしないと事が進まない。
「パフォーマンス・コンサルティング」という概念は、米国のロビンソン夫妻が著した書籍(1995年)が始まりだが、現在は世界的に人材開発分野の一般名詞になっている。また、昨年ASTD(American Society for Training & Development)は2013年版の「人材開発担当に求められるコンピテンシー(知識・スキルの要件)」を発表したが、その中でパフォーマンス・コンサルティングの実践に必要な知識・スキル(Analyzing Needs and Proposing Solutions)を基盤コンピテンシーの最初にあげている。
パフォーマンス・コンサルティングには、人材開発の実践家にとって有効なモデルやツールがたくさんあるが、当日の限られた時間では、上記の二つ目のメッセージにかかわるモデルを中心にご紹介したい。2~3演習を交えて進行するので、ぜひ新しいネットワーキングの機会としてもご活用いただきたい。尚、筆者には医療施設の支援実績がなく、一般企業を前提とした話が中心となることを予めご了承賜りたい。「組織の成果や業績」を今回の学会テーマである「医療リスクの低減」に置き換えてご理解いただくことで、少しでもお役に立つ情報提供ができれば幸いである。
もう少し詳しい内容を知りたい方は、以下の日本医療教授システム 学会誌の記事をご参照ください。
パフォーマンス・コンサルティングⅡ
研修効果にこだわる人事・人材開発スタッフには、おすすめの一冊。人材開発部のビジネス志向を高めるための具体的なフレームを整理した本です。
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ヒューマンパフォーマンスはパフォーマンス・コンサルティングを実践します。
人にかかわる施策、人材開発と事業戦略の連動性を高め、業績向上に貢献することがテーマです。研修効果で悩んだことがある方には有効なフレームワークです。人材開発のあり方や研修の見直しを検討されている人材開発担当の方におすすめです。
お気軽にお問い合わせください。
鹿野 尚登 (しかの ひさと)
1998年にパフォーマンス・コンサルティングに出会い、25年以上になります。
パフォーマンス・コンサルティングは、日本企業の人事・人材開発のみなさまに必ずお役に立つと確信しています。
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